宮沢賢治の銀河鉄道の夜のアニメ版。登場人物のほとんどが、ますむらひろしさんが描いているネコ。
主人公のジョバンニは、ちょっと内気。優しくて健気で子どもらしい少年のねこ。ねこが大好きなのもあって可愛くってたまらない。愛しくて抱きしめたくなります。
銀河鉄道の夜のアニメ 映画は、テレビで放送していたのを見たのが最後で30年ぶりになります。20代で見た時には思いもしない感じ方をしました。
ジョバンニのお父さんは、漁に行ったきりで、長年家に帰って来てなくお母さんは病気がち。
家計を支えるのにジョバンニは早朝は新聞配達、夕方からは活版所で活字拾いのアルバイトをしています。活字を落としてしまい拾うんだけどその姿も可愛いの。
疲れて授業中も眠くなったりぼんやりとしちゃうよね。一生懸命生きてるジョバンニ「えらいね。がんばってるね」ってつい声をかけてしまいます(笑)
バイトしてもらったお金でパンと角砂糖を買ったり、お母さんの牛乳を受け取りに行くジョバンニ。病気のお母さんが飲みやすいように砂糖入りの牛乳を飲ませてあげようとする場面。バイトと学校で疲れるし成長期だし栄養つけなくちゃってジョバンニに牛乳を飲ませてあげたくなります。
ジョバンニは、星まつりにもバイトがあるから同級生といっしょに行けません。星まつりに行く相談をしている同級生のそばを通り過ぎて行くジョバンニ。とても切なくなります。仲間はずれじゃなくて環境がそうさせてるんだよね。
バイトが終わって星まつりを見に行ったら、」クラスメイトのザネリから「ジョバンニ、お父さんから、らっこの上着が来るよ」ってからかわれてしまいます。真似して他の子も言います。
幼なじみで親友のカムパネルラだけは言いませんでした。ジョバンニとカムパネルラのお父さんも親友同士。ザネリは、「ジョバンニのお父さんはラッコを密猟して監獄に入れられてる」って噂して意地悪してホント嫌な子。憎たらしい。
カムパネルラは、からかわれたり一人でいるジョバンニを気にかけて見てるけど、どうして遅れてきたジョバンニに「いっしょに見よう」ってさそってあげないのだろう?カムパネルラは、クラスメイトが気になって親しくできないのかな…
バイトなどで忙しく遊ぶ時間がとれないジョバンニと距離ができてしまってるカムパネルラ。授業中、先生に指されて答えられないジョバンニを気にかけて自分も指されても答えなかったカムパネルラは優しい。でも、声をかけてお話しをしてあげてもって思ってしまうのです。
お祭り広場から立ち去って丘で一人さびしく空を見ているジョバンニ。丘の下に列車が走っています。気づくと列車に乗っています。向かいの席にはカムパネルラも乗っています。銀河鉄道という列車です。
大好きなカムパネルラと星空の旅ができてうれしくてはしゃぐジョバンニにほっこり。
鳥取りのおじさん、燈台守、タイタニック号の死者らしき三人組などいろんな人と出会い過ごします。幻想的な星の駅を巡り死者たちが下りる駅を通過し乗客はジョバンニとカムパネルラだけになります。
ジョバンニは、カムパネルラに「いつまでもいっしょにいよう」と言うのですが、カムパネルラの姿は消えていました。ジョバンニは泣きます。目がさめました。ジョバンニは丘の上で夢を見ていたのです。
ジョバンニは街に行きます。同級生のマルソからカムパネルラが川に落ちたザネリを助けるために川に入り流されてしまったことを聞きます。
カンパネルラが川へ落ちてから45分が経過し、カンパネルラのお父さんは息子の生存をあきらめます。涙を流すジョバンニに「君のお父さんはもうすぐ帰るはずだ」と話してくれます。
ジョバンニは夜空を見上げながら銀河鉄道の旅のことを思い出します。カンパネルラが今どこにいるのかジョバンニだけが知っています。銀河鉄道の旅でのいろいろな人と出会いと経験はカンパネルラが亡くなったあと生きていくジョバンニに勇気や自信を与えてくれたと思います。
カンパネルラが「さようならジョバンニ」と言って消えていってしまうシーンが悲しい。銀河鉄道の旅でジョバンニにカンパネルラは最後のお別れをしたのではないでしょうか…
「カムパネルラ、また僕たち2人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸(さいわい)のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」銀河鉄道の旅で本当のしあわせとは何かがわかったジョバンニ。
ラストシーンで、「カムパネルラ、これからもいっしょだよ」と心の中に言いながら走るジョバンニ。お母さんへの大事な牛乳びんをしっかりと抱えて家に帰る小さなジョバンニのからだが少しだけたくましくなったように感じました。
ジョバンニは、みんなの幸のために強く明るく生きていくでしょう。もう、孤独ではないですね。「カムパネルラは現世にはいないけどいっしょだね。お父さんももうすぐ帰ってくるね」
ジョバンニたちが住んでいる街並みやお家がステキで可愛らしいです。今、改めて観ると美しい映像の中に物語の深さを感じました。